クラウドPBXは災害時にも電話できる? BCP対策になる理由を解説

PBX 自然災害のイメージ図

日本は地震や台風などの自然災害が多いため、国内企業は強力なBCP対策が求められます。BCP対策において、電話業務の継続は重要な項目です。オフィスが停電しても電話業務を行える「クラウドPBX」は、効果的なBCP対策となります。

この記事では、クラウドPBXが災害対策になる理由や自治体の導入事例を紹介します。従来のPBXが災害に弱い理由も解説しますので、電話業務のBCP対策を見直したい方は、ぜひご覧ください。

そもそもクラウドPBXとは

   

スマートフォンで通話する女性

クラウドPBXとは、外線・内線・通話転送の機能を持つPBX(機内交換機)をクラウド化させたシステムです。インターネットを経由し、クラウド上のPBXを利用します。従来のPBXは主装置の設置が必須ですが、クラウドPBXは主装置を必要としません。

クラウドPBXの最大の特徴として挙げられるのが、PCやスマートフォンを内線化できる点です。外出先やテレワーク環境での利用に適しており、会社の代表番号による外線発信にも対応しています。こうした利便性の高さに加え、オンプレミス型の従来のPBXに比べて設置費用が安く、導入の手間も少ないため、需要が高まっています。また、災害時のBCP対策の一環としても注目されています。

災害が多い日本においてBCP対策は重要

   

英語表記の日本地図

日本国内の企業にとって、災害を見越したBCP対策は必須と言えます。日本は、世界的に見ても自然災害が多い国です。地形などのさまざまな要因により、台風や豪雪、地震、津波、火山噴火といった災害リスクが常にあります。

国土交通省の報告(※1)によると、2011年から2020年までのマグニチュード6以上の地震は、約17.9%が日本で発生しました。さらに、総務省のデータ(※2)では、1984年から2013年までの災害による世界の被害総額のうち、日本の割合は約17.5%に達しています。

複数の統計が示す通り、日本では自然災害が頻繁に生じています。日本国内の企業や自治体は、平時からBCP対策を実施して災害に備えることが重要です。

BCP対策とは

BCP対策とは、災害やサイバー攻撃などの被害が生じた後の復旧から、事業継続に関する対策やマニュアル、訓練の総称です。事業継続計画とも呼ばれます。意味の近い言葉に「防災対策」がありますが、大きな違いは目的です。災害対策は、主に自然災害の被害最小限化を目的としています。一方で、防災対策の運用を前提とした上で、事業継続の方法を示すものがBCP対策です。

※1 出典:国土交通省「河川データブック2021」
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen_db/pdf/2021/0-1all.pdf

※2 出典:総務省「令和2年情報通信白書」第2章 第1節
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/pdf/n2100000.pdf

従来のPBX(ビジネスフォン)が災害に弱い理由3つ

   

雷が落ちる夜の道路

これまで主流だったオンプレミス型のPBX(ビジネスフォン)は、近年は災害に弱い点が問題視されています。なぜ災害に弱いのか、以下3つに分けて見ていきましょう。

  1. 停電時に使えない
  2. 出勤しないと電話業務ができない
  3. 被災後の事業継続や復旧が滞る

詳しい理由を説明します。

1.停電時に使えない

従来のPBXは、停電時には利用できません。電話回線自体は停電時にも使えますが、社内の固定電話を管理する「主装置」は給電が必要です。PBXを導入している会社の固定電話は電話回線に直接繋がっておらず、主装置に接続されています。主装置を経由して電話を発着信する仕組みであるため、主装置が停止すると固定電話も使えなくなるわけです。

停電時にもPBXを動作させるためには、代わりに電力を供給する「UPS(無停電電源装置)」を用意しなくてはいけません。あるいは、停電時にも使用可能な「停電機能付きビジネスフォン」を導入する方法もあります。

2.出勤しないと電話業務ができない

従来のPBXはオフィスに設置するため、当然ながら社内でしか使えません。出勤しないと会社への着信を取れず、会社の代表番号を使った発信も不可能です。したがって、オフィスが被災していなくても、台風や豪雪により公共交通機関が止まった際の影響は避けられません。公共交通機関が停止して従業員が出勤できない状況が続くと、電話業務が一切できないか、滞る恐れがあります。電話応対ができない間は、取引先や顧客との意思疎通に大きな弊害が生じるでしょう。

3.被災後の事業継続や復旧が滞る

従来のPBXの問題点の1つに、被災後の事業継続や復旧がしづらい点が挙げられます。従来のPBXは、主装置に電話帳などのデータを保管する仕組みです。そのため、オフィスが被災して主装置が破損すると、データの復旧が難しくなります。また、電話応対自体もできないため、事業継続が困難です。

さらに、主装置が破損し、被災後も従来のPBXを使い続ける場合は、新たな主装置の設置工事が必要です。仮に被災後はクラウドPBXへ移行したとしても、失ったデータは戻りません。災害が多い日本のBCP対策として、オンプレミス型である従来のPBXは不向きなシステムと言えます。

クラウドPBXが災害対策になる理由2つ

   

青空と高層ビル

災害時に多くの課題がある従来のPBXに対し、クラウドPBXは災害に強いと言われています。クラウドPBXが災害対策になる理由は、大きく次の2つに分けられます。

  1. スマートフォンで電話業務を行える
  2. データのクラウド保存で事業継続が可能

それぞれ具体的に解説します。

1.スマートフォンで電話業務を行える

クラウドPBXは、社員のスマートフォンを内線化できます。加えて、会社代表番号を使った発信や外線着信の転送も可能です。そのため、被災によりオフィスが停電して固定電話が使えない状況でも、スマートフォンを使って電話業務を継続することができます。

また、公共交通機関が麻痺して社員が出勤できない場合でも、クラウドPBXであれば自宅で電話応対ができます。クラウドPBXは場所を問わずに利用できるため、災害による電話業務停止を避ける有効な手段の1つです。

2.データのクラウド保存で事業継続が可能

クラウドPBXは、被災後の事業継続にも役立ちます。電話帳などのデータはベンダーのクラウドサーバーで保管されており、従来のPBXのような物理的破損の心配がありません。万一オフィスが大規模な被災を受けても、データは守られます。

また、オフィスが被災した場合、別の場所へ一時的に移転する企業もあるかと思います。そういった状況でも、クラウドPBXであればスムーズな移転が可能です。データの移行作業が不要なので、被災後の移転や復旧を迅速に行えます。

クラウドPBXと従来のPBX(ビジネスフォン)の比較

   

クエスチョンマークを載せた天秤

ここまで解説してきたように、クラウドPBXと従来のPBX(ビジネスフォン)は災害対策に違いがあります。他にはどのような違いがあるのか、比較表で確認しましょう。

項目/種類 クラウドPBX 従来のPBX
基本機能 外線、内線、転送、録音、IVR(自動音声応答システム)、CTI、SMS、ビジネスチャット など
※サービスによって異なる
外線、内線、転送、録音、IVR(自動音声応答システム)、CTI
※製品によって異なる
導入形態 クラウド オンプレミス
コスト 低い 高い
利用端末 固定電話、スマートフォン、PC 固定電話
工事 不要 必要
停電時 ・スマートフォン:利用可能
・固定電話、PC:利用不可
利用不可

以上のように、クラウドPBXと従来のPBXは各項目で異なる点があります。基本機能はクラウドPBXと従来のPBXでも同等の機能もありますが、クラウドPBXはクラウドである利点を活かした、クラウドと親和性の高い機能、SMSやビジネスチャット等の連携機能を備えたものがあります。

主装置を直接点検しなければいけない従来のPBXとは違い、クラウドPBXはベンダーがクラウドサーバーで一括管理しています。そのため、トラブル時の迅速なサポートはクラウドPBXのほうが期待できるでしょう。

他にも、クラウドPBXの価格の安さや工事不要などの特徴が目立ちます。災害対策としてだけでなく、機能や導入のしやすさといった点でもクラウドPBXは優れているとわかります。

自治体でも進むクラウドPBXの導入

   

昼間の街並み

クラウドPBXは、民間企業だけでなく自治体にも導入が進んでいます。たとえば、福島県南会津町の導入事例があります。南会津町は、2011年の東日本大震災を受け、災害に強い通信インフラを求めてクラウドPBXを採用しました。以前はオンプレミス型のPBXを導入していましたが、2017年の新庁舎開設に伴いクラウドPBXへ移行しています。

他にも、大分県豊後大野市の例があります。大野市は、市役所などの公共施設と市内世帯の固定電話をクラウドPBXで繋ぐ形で導入しました。これにより「市内電話の無料化」と「一般電話網とクラウドPBXの2つの通信網の確保」を実現しています。クラウドPBXを利用するためにはケーブルテレビへの加入が必要ですが、2019年には市内世帯の加入率が90%を超えました。

このように、クラウドPBXは自治体に広がりつつあります。自治体の災害対策として注目されるクラウドPBXは、民間企業のBCP対策にも適したサービスです。

UPS(無停電電源装置)と合わせればより強いBCP対策に

   

明るく光る電球

クラウドPBXを利用したより強いBCP対策を求めるのであれば、UPS(無停電電源装置)の導入をおすすめします。停電時は、当然ながらWiFiルーターやIP電話機は使えません。そのため、クラウドPBXを導入した端末の中で、停電時にも使えるのはスマートフォンに限られます。

スマートフォンはモバイルデータ通信を使うので、社内のインターネットが不通になっても影響を受けません。停電時にスマホだけでなくIP電話機やPCもクラウドPBXを使いたい場合は、UPSを導入しましょう。

UPS(無停電電源装置)とは

UPS(無停電電源装置)とは、停電時にも電力を供給する装置です。停電だけでなく、電圧変動などのトラブル時にも自動で給電します。UPSを導入すると、停電時もオフィスの通信環境の維持が可能です。そのため、IP電話機なども含めたクラウドPBXを完全な状態で利用できます。

さらに、突然の電圧変化・電力停止による、OA機器の故障やサーバーデータ破損の予防にも効果的です。

クラウドPBXは災害時の事業継続を実現するサービス

クラウドPBXは、日頃の利便性だけでなく災害時にも役立つサービスです。スマートフォンの内線化により、公共交通機関が止まっても自宅で電話業務を行えます。

また、オフィスが被災した場合も、スムーズな復旧作業が可能です。従来のPBXは災害に弱く、BCP対策には向いていません。電話業務のBCP対策を強化したい企業は、クラウドPBXを導入しましょう。

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